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人見知り
『中村さんってまだ若いですよね。俺らと同じぐらいですか?』
他の選手たちが年齢の近そうな慎弥に親近感を持ったらしく、話かけてきた。
『そうですね。今、28なんで同じ世代ですかね』
『へえ、そうなんですか? 俺、もっと若いかと思った』
『童顔に見えます?』
『いや、そうじゃなくて……。なんていうか、なんか、可愛らしい感じですよね』
『はあ……そうですかね』
『結婚してるんですか?』
『おい、お前、失礼だって。初対面で』
『あ、すみません。中村さん、なんか話しやすいからつい突っ込んで聞いちゃって……』
『別に大丈夫ですよ。結婚はまだです』
『そうなんだ。モテそうなのに』
『いやいや、全然。出会いもないですし』
『俺らも全然縁ないもんなぁ』
『そうなんですか? スポーツ選手の方って格好いいし、モテそうですけど』
『バスケ選手なんて、全然ですよ。俺ら、寮だし。ほぼ練習ばっかりだしなぁ』
『会社で出会いはないんですか?』
『あるにはあるけど、なんでも社内ってのも嫌なんですよねぇ』
『お前、そんな贅沢言ってるからいないんだろ』
『それを言うなって』
と会話が盛り上がる中。その会話をただ傍で立って聞いているだけだった須藤が、突然口を開いた。
『コーチ、もう行っていいですか。時間もったいないんで』
『ああ、いいよ』
そう言って、さっさとその場を後にして控え室に消えていく姿を見送った。
『あいつ、相変わらずだな』
『愛想悪いっていうか、人見知りっていうか』
『いつもそうなんですか? 須藤さん』
『初対面の人にはそうですね。だけど、今日は酷い方かも。いつもはもうちょっと無理にでも笑ったりするんですけど』
『機嫌悪いんじゃね?』
『なんかあったのかな?』
『女と別れたとか?』
『あいつ、ずっといないよ』
『え?? そうなの? あんなにモテてんのに?』
『今、興味ないらしいぞ。バスケに集中したいとか言ってた』
『それってモテるから言える台詞だよな。俺は年中無休で募集中なのにできねー』
『お前はもうちょい練習に年中無休になれよ。手ぇ抜いてると落とされるぞ』
『分かってるって』
といつの間にかついて行けない内容の話になったので黙っていると。選手たちが気づいてごめんごめん、と謝ってきた。
『まあ、須藤ははしゃぐ方じゃないけど、悪いやつじゃないし』
『そうそう。慣れてきたら普通に話すようになるし。あんま気にしないでね』
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