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知らない番号
第2クォーターが終了した時点で、点差はわずか2点。須藤のチームがリードしていた。
めっちゃくちゃいい試合じゃんっ、と手に汗握る展開に興奮しながら、ビール缶を掴んでごくりと一口飲む。よし、休憩のうちにトイレいっとこ、と立ち上がったとき。充電器に繋げておいた携帯電話が鳴り出した。時刻を確認するともう真夜中だった。画面には知らない番号が提示されている。
こんな遅くに誰だろうか。しかも知らない番号からだし。
無視しよ。
そう思い、出ずにトイレへと向かった。トイレに入っている途中で鳴り響く呼び出し音が途切れた。手を洗ってトイレから戻り、再びラグに腰を下ろしたところで、再び携帯が鳴り出した。確認すると先ほどと同じ番号だった。
もしかすると知り合いだろうか?それに何度もかけてくるところを見ると緊急かもしれない。
迷った末に、慎弥は電話に出た。
「はい」
『おい、すぐ出ろよっ。お前が今日かけてこいって言ったんだろーが』
「……どなた様ですか?」
『はあ? なに言ってんの? 俺だけど』
「……知り合いに『俺』なんて人いないんですけど」
『……なにこれ。新たな弄り?』
「違いますよ。番号、間違えてません?」
『……え?』
「俺、あなたのこと知らないんですけど」
『……嘘』
「嘘じゃないですよ」
『え? だって。番号って……』
そう言って、相手が電話番号を伝えてきた。それは確かに自分の番号だった。
「それは俺の番号ですけど……。たぶん、間違えてメモしたとかじゃないですか?」
すると、相手がそのときのことを思い出そうとしているのかしばらく黙った。それから、小さな声で、あ、と呟いた。
『違うのだった……』
その意味がよく分からなかったので黙っておく。するとさっきの勢いはどこへやら、緊張したような、かしこまったような口調で説明してきた。
『あの……最近、友達が携帯変えたんだけど……番号間違えたみたいで』
「やっぱり」
『……すみませんでした』
「いや、別に大丈夫だけど」
『…………』
相手が黙り込んでしまったので、慎弥も反応に困った。早く電話を切らなければ試合の続きが始まってしまう。仕方なく、慎弥から口を開いた。
「あの……友達に用があったんじゃないんですか? そしたら早く切って電話した方がいいんじゃ……」
『ああ……そうだよな』
そうは言うものの、また再び黙り込んで電話を切ろうとしない。なにか言いたいことがあるような空気が伝わってきて、慎弥も無下に電話を切れなかった。
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