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暗闇のなかに溶け込むように黒塗りの外国車が止まっていた。それに寄りかかるスーツの男を遠目で確認する。
すらっとした長い足。比べて広い肩幅、180以上はある長身。
遠くからだと海外のモデルを見てるようだ。
「佐藤さん!」
夜なので控えめに呼ぶと、スマホから視線がこちらに向けられた。
「景くん」
ぱっと花が咲いたような笑顔で手を振られる。
振り返しながら目の前まで近づいていくと、ぎゅうっと抱きしめられた。
「は〰️久しぶりの景くんだ…すごく会いたかったよ」
「そりゃどうも。仕事はおわった?」
「うん、もうバッチリ。部下の尻拭いも上司の役目だしね」
「そっか、大変だったね。お疲れ様」
力いっぱい抱きしめられたせいで苦しい。背中に手を回してぽんぽんと軽く叩く。
「景くん…」
何かに感激したのか涙目でさらに腕の力が強くなっていく。
「ちょっ、ギブギブ。死ぬから折れるからぐぇっ」
「無理、愛しすぎて無理。すっごくかわいい」
鼻先を首もとに擦り付けられては吐息が耳元にかかり、思わず身震いしてしまう。
「景くん」
低い甘ったるい声で囁かれる。耳にキスをされて軽く噛まれた。何度も繋がった身体はそれだけで簡単に火がついてしまう。
怯んだ隙に不埒な手が際どい所におりてきて、服の裾から入り込もうとするのを咄嗟に捕まえた。
「ダメだよ佐藤さん。家まで、な?我慢してよ」
頬を両手で挟んで見上げると、佐藤さんはばつが悪そうな顔で苦笑いをする。
「ごめん、ガッついてたね。正直余裕ないんだ、今すぐ君を抱きたくて仕方がない」
長いまつげを震わせて大の大人が赤面で誘ってくる。
「俺さぁ佐藤さんの顔見るまで絶対不細工だと思ってた。」
「え?なに、何の話?」
「いや、可愛いなって」
高い鼻梁に薄い唇、綺麗な琥珀色の瞳は外国の血が混じっているらしい。
こんな平凡な俺にどうして惚れてしまったのか未だに理解できない。
でもこんなに完璧な人が『男』の俺を好きなんだ。
「カッコいいの方が…嬉しいかな」
「ん、イケメンだよな。佐藤さんの顔好きだよ」
「また君は…」
手を取られて緩く引っ張られては助手席に促された。
「さて…お預けをもらった僕は運転手に徹しよう。行きたいところはあるかい?」
「うん。あ、俺エビチリ食いたい」
「中華か、僕も小籠包食べたいな。回転テーブルあるとこがいいよねぇ」
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