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佐藤さんと出会ったのは一年ほど前、去年の6月だった。 その日は想い人である田辺と喧嘩して、落ち込んで、とにかく誰かに話を聞いてもらいたかった。 今となっては自棄になってたんだとわかる。 その時から既に田辺は壊れ始めていて、彼女を作っては捨てて、また新しい彼女をつくっては違う女性と遊んだりと女性関係が苛烈だった。 さすがに節操がないと注意したら、 『女と付き合ったこともない奴に言われたくねーよ』 お前がそれを言うのか、と目の前が赤くなって、気付けば殴っていた。 そこからは殴りあいに罵りあいで大騒ぎ。田辺の家だから無人で済んだから良かったものの、互いの間には決定的な溝ができてしまった。 彼女たちが羨ましかった。 たとえ酷く扱われても、あいつと触れあえて、近くにいて、愛を囁かれるならそれ以上の幸福は俺には思い浮かばない。 伝えることの出来ない自分が悔しくて、情けなくて、気付けばゲイ専用の出会い系サイトに書き込んでいた。 『高校生です。何されてもいいです』 顔写真も乗せずに投稿して、じっと画面を見つめていた。 5分ほどそうして、反応がないことに当たり前かと独りごちて。もう寝ようとスマホを枕横に投げて、電気を消した時だった。 ピロン 軽快な音が聞こえて元を辿ると画面にメッセージがあった。 『会えませんか』 プロフィールを見ても佐藤という名前しか情報がない。在り来たりな名前。多分、偽名だろうなと直感した。 片思いにも疲れたし、相手もゲイだからこんな気持ちを抱えたことぐらいあるはずだ。 セックスの代わりに話くらいなら聞いてくれるかも。 もし変なプレイを要求されたらどうしようと一瞬身を考えたが、結局了承の返事を送った。 それに、こんな真夜中に即レスしてくる偽名の男がどんな人物か気になってしまう。 「すげぇ不細工かも」 脂ぎったオジサンを予想していた俺は 当日、待ち合わせ場所で声をかけられて 予想が大いに外れていたことを知る。

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