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第15話

 想像以上の速度だ。連日ワイドショーや週刊誌では特集が組まれ、匿名、特定しないと上っ面で気を使いながら善人ぶったコメンテーターが話を広げている。今すぐ止めなければ悪意が人を殺すのがわからないのか? 「随分なスクープ隠し持ってたな?」  後ろから編集長の神松の声がした。 「すみません……」 「ま、俺でも出さねーけどな。だが手薄だったな」  そう、俺が3日で調べられるようなことが他紙に調べられない訳がない。もう宝石君の素顔を公表した時点でこの事実が明らかになることは分かりきっていたはずだ。だがそこまで思い至らなかった。全てを出すべきじゃなかったのだ。 「そんなに落ち込むな。妖精ちゃんは、うちが手を引いていたら、他誌を使っただろう。どちらにせよ。出るべくして出た情報だ」 「出たよーー」  あれからずっと関連情報を収集している田野崎の声がしてモニターを覗くと、予想通りの情報が晒されていた。ネットは早い。宝石君の出身校、担任の名前、現在勤務の学校名。同級生の顔写真と名前、大学名、勤め先などがスレッドに並ぶ。  見つけ次第プロバイダーなどに削除要請を出すが止めることはもう不可能だ。この間会った青柳君の写真もあった。これから先、彼らがどんな目に遭うかと想像するとゾッとする。  宝石君はあれ以来、YouTubeを更新せず、沈黙を守っている。自分の投げた石の波紋が広がり続けるのを見て楽しんでいるに違いない。これからなにが起きても、以前彼らが罪に問われなかったように、宝石君も罪に問われることはない。世間という巨大な正義が彼を守り、かつてのクラスメイトに牙を剥く。  どうしたらいい?  どうしようもないのか?

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