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第14話

 8月号が発売されてから2週間たった週明けの月曜日。出社すると編集部内が大騒ぎになっていた。電話がずっと鳴っていて、みんな手を取られてるし、他部署の連中が狭い【BLACK30】編集部内にひしめいていた。 「いったい何事だよ?」 「おーー来た来た!」  入った途端、あっという間に他部署のむさい記者連中にとり囲まれる。 「お前の妖精ちゃん。大変なことになってんぞーー」  え? 宝石君のこと? なんかあったのか? 「今朝のスポーツ新聞で妖精ちゃんの過去のえげつない事件すっぱ抜かれて、朝からネットと、テレビのワイドショーで大騒ぎだ」 「え? ちょっと見せて!」  目の前に差し出されたスポーツ新聞を引ったくって見ると宝石君の本名、年齢の他にあの事件について書かれていた。スポーツ紙らしく、断定せず言葉尻で、うまく逃げているが、ほぼ調べた内容と一緒で宝石君にだいぶ同情的な内容だ。 「おい、みんな見ろよ!」  誰かの声がして編集部のモニターに宝石君のユーチューブチャンネルが映った。彼の姿はすっぴんで服装も普通の白いシャツにデニムだ。少し青ざめたような顔で口を開いた。 「今日の新聞で僕の過去のことが記事になりました。今回はそれを受けての動画になります。皆様にお願いがあります。誰も悪くないんです。どうか、そっとしておいてください。僕は今幸せに生きています。それだけで十分なんです」  言うと、宝石君は頭を深く下げた。  長い、3分、いや5分くらいか、やっと顔を上げると大きな瞳からぼろっと涙を流した。  そのままもう一度頭を下げると放送は終了した。 (やられた!)  その言葉が警戒音のように頭に響く。  こいつ。元々、俺の助けなんか必要じゃなかったんだ!      

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