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第1話
俺は……ずっと変わりたいと思ってた。
泣き虫でビビリな俺はずっと虐められていた。
この性格を直さないと変われない事くらい分かってる。
でも、他人に嫌われるのが怖くて人見知りになり話す事も出来ず一人ぼっち。
声を掛けられても緊張で上手く喋れず去っていく。
前髪も長くして周りからはオタクと呼ばれて、もう俺は変われないと思った。
……きっとずっと同じだ。
そんな俺を暗闇から引っ張り出してくれた人がいた。
…俺の初めての友達、何でも話せる親友。
…………親友、だった。
「おい遥!お前またそんなところで飯食ってんのか!?行くぞ!!」
「……あ、その…俺」
「いいから来いよ!!」
「いっ、痛いよ千早くん」
俺の声など聞こえていないのか、腕を力一杯掴まれて席を立たされ教室を引っ張られるように出た。
椅子が大きな音を立てて倒れたが直す暇もなかった。
千早くんはどっかの族の総長?をやってるらしく力が強くて痛かった。
でも俺に拒否権はないんだ……友達、だから…
この学校は普通の学校だったんだ、数ヶ月前までは…
理事長先生の甥として今俺を引っ張っている山中千早 くんが転校してきた。
もう入学式が終わって二週間後だったから不思議だなと思いながら他人事のように俺のクラスに来た千早くんを見ていた。
最初の異変は親友の潤 の変化だった。
潤は千早くんに構ってばかりで俺と話してくれなくなった。
千早くんは男の俺から見ても可愛い顔をしてるから潤は千早くんに恋してるのかと思い応援しなきゃと寂しい気持ちを我慢して見守っていた。
この学校は男子校だし、同性愛は多くはないがいる。
実際生徒会という美形集団に恋心を抱いてる人がいて親衛隊なんてものがある。
何もかも俺には関係ないと思っていたが…
「お前、名前なんて言うんだ!?俺は山中千早、千早って呼べよな!友達だろ!?」
それが千早くんが俺に話しかけてきた第一声だった。
友達って話した瞬間になるんだっけと思う暇もなく、大きな声になんか威圧感がありビビリながら頷いた。
そして俺は見てしまった。
千早くんの後ろにいた潤の冷めた瞳を……
これが嫉妬…なのだろうか。
恋をした事がない俺は何も分からなかった。
いつの間にか千早くんの周りには学校で人気がある人達で溢れていた。
あの生徒会も千早くんに恋をしたんだと思い驚いた。
でも皆俺が嫌いらしく、千早くんがいない間に見えないところを殴ったりしてくる。
さすがに問題になるからか痣になるほど強くないが俺の精神はボロボロだった。
潤は手を出さないが酷い言葉で俺を罵倒していた。
皆人気者でカッコイイから俺みたいな平凡、気に食わないんだろう。
千早くんは俺が人気者達を独り占めしてると思い込みゴミを投げつけたり酷い時は痣になるほど強く腹を蹴られる、ちなみに下の名前を呼ばないと殴られるから渋々呼んでるが、あまり呼びすぎると人気者達に殴られるからほどほどにしている。
周りの同級生達や教師は関わりたくないと見て見ぬふりで、今は動いてないが近いうちに過激派の生徒会親衛隊が動くという噂もあった。
俺は助けを求めるのを早々に諦めて、これが俺の日常なのだと受け入れる事にした。
助けを呼ぶのも疲れるし、流される日常の方が楽かもしれない。
その先にあるのは地獄だとしても……
また食堂に行くと俺は、生ゴミを食わされるのかな……いや、食わないけど…いつもの事だからさっきコンビニで買ったパンを食べてお腹一杯にしたから大丈夫。
そして放課後…俺が解放される瞬間がやって来た。
唯一の救いがこの学校は全寮制ではない事、俺の唯一の癒し空間の実家があるから何とか耐えられる。
放課後になると俺に興味をなくしたように千早くん達は構わなくなる。
俺は早々にカバンを持ち帰る。
街を歩いていると街の真ん中にあるビルの大きなテレビに女子高生達が集まってはしゃいでいた。
どうやらCMが流れてるみたいだ。
『おいで、俺のお姫様…』
「キャー!!やっぱり煌はいいね!!」
「あー、こんな彼氏ほしー!!」
「アンタじゃ無理よ、あの国民的美少女の中野真紀子もフッたって噂だし」
「ってか今日、煌の写真集の発売日じゃなかった?」
「やばっ、早くしないとまた売り切れちゃうよ!いこいこ」
女子高生達は慌てたようにいなくなった。
何のCMだろうと気になって近付いてみた。
あー、宝石のCMか…そういえばこのビル、有名なジュエリーショップの本社だって母さんが目をギラギラさせて話してたっけ。
まだテレビに釘付けの人がいる、家に帰れば見れるのに…
そう思いながらテレビから離れる。
彼になれたらなにか変われるのかな?
本業は高校生兼モデルという薬師寺 煌 くん。
実家が金持ちで本人もかなり稼いでいて今じゃマルチで活躍してテレビには欠かせない存在だと言われてる。
少なくとも平凡だと虐められないだろう。
だって千早くんが今ハマってる子だから…今の薬師寺くん情報も千早くんから無理矢理聞かされた。
薬師寺くんの前じゃカッコイイ生徒会も霞んで見える。
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