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第一章 七夕の出会い
7月7日、くもり。
夜には雨が降る予報で、残念ながら織姫と彦星は涙を飲むことになるだろう。
しかし、桂 幸樹(かつら こうき)はカフェの先輩アルバイト・新庄(しんじょう)から、恋人の甘いのろけ話を延々聞かされていた。
「でな。俺がアパートから帰ろうとすると、折りたたみ傘をちゃんと用意してくれてんの。イイだろ? 気が利くだろ?」
「素敵な人ですね」
「だろ~? だからさ、お前も早く恋人見つけなよ」
「僕はまだ、そんな。恋人とか、考えたことなくて」
うーん、と新庄は腕を組んだ。
「桂は、おとなしいからなぁ。そうだ。次に、店に入ってきた人に、声をかけてみなよ」
「お客様に、ですか!?」
「出会いの一歩になるかもよ?」
そこへ、カウンター向こうからカフェのマスター・遠山(とおやま)が、首を伸ばしてきた。
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