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第一章・2
「新庄くん。幸樹くんは大切な預かりものなんだ。妙なこと、吹き込まないで」
「すみません!」
遠山は、幸樹が中学生の時に亡くなった母から、彼を託された。
母子二人の家庭で育った幸樹は、幼いころからよくこのカフェに連れられて来たものだ。
その母は、幸樹の父をいつもこう言っていた。
『お父さんは、人の上に立つお仕事をする、立派な方よ』
その言葉からすると、どうやら父は生きているらしい。
経済的に困っているわけではないので、生活費は父が用立ててくれているのだろう。
そんな父に、幸樹は常日頃から会ってみたいと考えていた。
『どんなお父さんなんだろう。マスターの遠山さんみたいに、優しい人だといいな』
だが母は、一度も幸樹を父に会わせることなく、亡くなった。
独りぼっちになってしまった幸樹を引き取ってくれたのが、遠山だった。
母の遺言、ということで、幸樹は遠山のカフェにお世話になることになったのだ。
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