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第一章・3

(多分マスターは、お母さんのことを愛していたんだろうな)  それでも父に遠慮して、好意を母に伝えなかった男・遠山。  だからこそ、お母さんも僕を託したに違いない。  18歳になった幸樹は、そんな風に思うようになっていた。 「いいなぁ。そのうち僕にも、恋とかできるかな」 「人間、恋をして一人前になれるのさ」 「新庄くん、すまないけど表をちょっと見てきてくれる?」 「あ、はい!」  また話をとがめられたと考えた新庄だったが、マスターは曇った表情だ。 「さっきから、客足がさっぱりだ。いつもこの時刻に見える常連さんも、やって来ない」 「そういえば、そうですね」  新庄は軽快にドアを開け表に出て行ったが、次の瞬間には3倍速のスピードで戻ってきた。 「た、大変です! 何か、人相の悪い人たちが、店の周りをウロウロしてます!」  どういうことだ、と遠山が思いを巡らすより前にドアベルが鳴り、背の高い男が入ってきた。

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