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第一章・4
オールバックに整えた黒髪に、しっかりと高い鼻梁。やや薄い、唇。
サングラスを掛けているのでその眼差しは見えないが、まるで俳優のように整った顔立ちをしている。
しかし、そのファッションには、やや問題があった。
黒のスーツに、黒いシャツ。黒いサングラスに、黒の革靴。
白いのはネクタイだけの姿は、いかにも……。
『マスター、やばいですよ。絶対、ヤクザさんですよ!』
『何でそのヤクザさんが、うちの周りを囲んでるの!?』
ひそひそと小声の二人を尻目に、男はどさりと席に掛けた。
『どうします? 警察、呼びますか?』
『でも、暴れたりはしていないから』
「いらっしゃいませ。お決まりですか?」
「桂!」
「幸樹くん!?」
次にカフェに入ってきたお客様に、声をかける。
幸樹は、本当にそう決めていたのだ。
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