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第一章・5
幸樹は真っ直ぐにこの怪しい男に近づき、普段通りに話しかけていた。
ただ、これではいつもの接客パターンだ。
そこで一歩、前へ踏み出した。
勇気を出して、前に出た。
「よろしければ、お名前をお聞かせください。僕は、桂 幸樹といいます。
「……九丈 玄馬(くじょう げんま)だ」
「九丈さま、ご注文はお決まりですか?」
「この店では、注文の前に名前を訊くのか?」
「失礼しました。お名前は、僕が独断で訊かせていただきました」
「なぜ?」
「あの、その。お客様が素敵だったからです」
「……キリマンジャロ、一つ」
「かしこまりました」
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