6 / 195
第一章・6
玄馬は、カウンターへ戻って行く幸樹の背中を見ながら、困惑していた。
今日は、わざとこの服装でカフェに来た。
善良な市民なら、震え上がるような不吉な格好で。
外に待たせてある部下も、派手なシャツや喜平ネックレス、腕のタトゥーが見えるような半袖と、いかにも極道らしい装いでキメている。
だのに、なぜ。
『よろしければ、お名前をお聞かせください。僕は、桂 幸樹といいます』
(彼がよほど豪胆なのか、それとも私がぬるいのか)
そこで玄馬は、コーヒーを運んできた幸樹を試すことにした。
ともだちにシェアしよう!