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第一章・9
「新庄くん、塩を持ってきてくれ!」
「はい?」
「塩を撒いて清めないと、仕事にならないよ!」
そのままの怒気をはらんだ様子で、遠山は幸樹に言った。
「夕食の約束なんて、すっぽかしていいからね!」
「え、でも。九丈さん、コーヒー代を払わずに行ってしまわれました」
「何だって!?」
玄馬から代金を徴収する、という名目で、幸樹は7時に待ち合わせの駅前へ出かけることに決めた。
できることなら、遠山のカフェから手を退いてもらうように頼むつもりもあった。
「素敵な人だったな。でも、まさかヤクザさんだなんて」
幸樹は、玄馬の顔や姿を思い浮かべた。
クールな印象だったけど、ハートは熱いかもしれない。
「話せばきっと、解ってくれる」
そんな希望を胸に、約束の場所へ急いだ。
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