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第二章 初めての夜
夜でも明るい、駅前広場。
予報通り小雨がぽつぽつ降り出した中を、幸樹は走った。
「あ。九丈さん、もう来てる」
遠目に見ても、玄馬の姿はすぐに解った。
人より、頭一つ分高い長身。
背筋の伸びた、良い姿勢。
そして、全身黒づくめのファッション。
「お待たせしました!」
息を切らせて視界に飛び込んできた幸樹に、玄馬は目を細めた。
(カフェの時もそうだったが。……なかなか可愛いじゃないか)
真っ黒な玄馬とは対照的に、幸樹は白い格好だった。
白のTシャツに、ライトブルーのジーンズ。
肌も抜けるように白いので、宵闇の中に美しく浮かんで見える。
「……」
「あの。九丈さん?」
「あ、すまない。つい、見蕩れたよ」
見蕩れるだなんて、そんな。
幸樹は、頬を染めた。
「じゃあ、行こうか。レストランを、予約してある」
「ありがとうございます」
黒い玄馬と白い幸樹は、並んで駅前を離れた。
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