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第二十一章・8
「出産までの里帰りは、どうする?」
「35週ごろに、遠山さんのカフェへ行きます」
「会いに行くよ。毎日、カフェに通う」
「無理しないでください。お仕事、ちょうど忙しいでしょう?」
それには、首を横に振る玄馬だ。
何をおいても、幸樹とお腹の赤ちゃんに勝る大切な存在は、無いのだ。
「絶対、毎日会いに行くよ」
「ふふっ。カフェに立ち退きを迫ってた頃みたいですね」
「それはもう、言わないでくれ」
あの頃はただ、幸樹のことが気になって。
それでいて、立ち退きに利用しよう、なんて姑息なことを考えていて。
「今は、幸樹のことが愛しくて恋しいだけだ」
「……嬉しいです」
幸樹は、体をかがめて玄馬にキスをした。
はじめは、額に。
それから、頬に。
そして、唇に口づけた。
温かな体温を分かち合い、温かな時間を共有した。
幸せなひとときは、温かな未来を約束しているようだった。
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