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1.雄っぱいに出会った
俺とダイチとの出会いは雄っパブ、いやなんて所で出会ってんだと自分でも思うが出会ってしまったものはしょうがない。
成人式を迎えおおっぴらに酒が飲めるようになった俺達は調子に乗って二次会三次会……おそらく六次会あたりでそこを見つけてしまった。
『おい雄っパブだってよ!』
『マジかよ入ろうぜ! 雄っぱい雄っぱいギャハハハハっ!!』
そんなノリだったと思う、あまり覚えてないが。
そこはまぁ見事に雄っぱいだらけだった。と言うか筋肉ムキムキの男達が胸筋を見せつけるような格好で接客してた。
『あっれ? なんかお前見覚えある〜』
『そうだな、俺もお前見覚えあるな。と言うか同じ大学だな』
そんな中で一際デカイやつがいるなぁって見てたらまさかの大学の同級生。
見覚えがあるはずだ。話した事はないがこれだけデカイ図体をしていれば目立つ目立つ。
こいつには絶対に喧嘩を売らないでおこうと心に決めていたほどだ。
デコピンだけで吹っ飛ばされそうだし。
そんな俺とこの筋肉もりもり雄っぱい男は、只今同居中である。
何でだよって思うだろ? 俺も思うよ。
こいつとの同居の経緯は、
『てかさぁ、親が成人したんだから一人暮らしでもしろとか言い出したんだけど……いきなり一人暮らしとか無理っしょ』
『じゃあ俺とルームシェアするか? 今借りてるマンション部屋余ってるぞ?』
『まぁじでー! 行く行く! よろしくな雄っぱい!!』
『ダイチな……お前は?』
『おれ〜? 俺はカオル!』
とまぁここもかなり軽いノリで決まった。
酒って怖い。
この会話の前にこいつの雄っぱいを揉んだような記憶もある。
ホント、何やってんだろ俺。
「──ぎゃあああっ!!!」
「っ!!?」
回想にふけっている俺の耳に野太い叫び声が飛び込んでくる。ついでに雄っぱいが飛び込んでくる。
「カオル! ごき……ゴキブっ……ゴキブリがぁあっ!!」
「〜〜〜っ!!」
思いっきり雄っぱい男、いやダイチに抱き着かれた俺はムッキムキなその胸に埋もれて息が出来ない。
バンバン叩いてようやく開放された俺はダイチを見上げながら睨みつけた。
「おっまえ……殺す気か! ゴキブリぐらい自分で何とかしろ! なんの為の筋肉だ!!」
「筋肉じゃゴキブリには勝てない!」
「だったら文明の道具を使え! 殺虫剤あんだろが!」
ギャーギャーと喧嘩しながらも結局俺が退治するはめになって、読み終えた無料雑誌で一度で仕留めた。
後始末まで俺が行って、ようやくダイチは落ち着く。
「いや〜、カオルが居てくれてよかった。怖かった……」
「ゴキブリもお前みたいなムキムキに叫ばれて怖かったろうよ」
手を洗う俺に背後から抱きつきながらダイチが頭上で泣き言を言ってくる。
ダイチの声は頭上から聞こえるが、別に俺は低身長じゃない。どちらかと言えば高い方だ。
だがこいつがデカすぎる。何センチあるのかは悔しいから訊いたことはない。
「カオル……もう結婚しよう。俺はお前なしじゃ生きていけない……」
「そうな、料理も出来ねぇ掃除も出来ねぇおまけにゴキブリ一匹も退治出来ねぇんじゃ一人じゃ暮らせねぇよな。米の研ぎ方すら知らねぇやつ初めて会ったわ。今までどうやって生きてきたんだ」
「家事代行頼んでた。高かった……」
「そんなんだから雄っパブなんかで働くはめになんだよ!!」
そう、こいつは親からそれなりに仕送りをもらっている筈なのにいつも金欠だった。
生活能力が皆無だったから他に頼らざるを得なかったのだ。
その金欠策が雄っパブでのバイトだったんだと。
給料が良かったかららしいがぶっちゃけこいつ馬鹿かと思った。
家事代行を雇って食事もほぼ外食となればそりゃ金も無くなるわな。
今は俺が家事を代行しているわけだが、俺だって家事が完璧な訳では無い。
今までかーちゃんに頼りっきりだったから見様見真似なのだが、それでもダイチよりはマシだしコイツも文句を言わないのでそのまま続けている。
以前グラタン作って大失敗した時も美味い美味いと言いながら完食したしな。そこら辺は良い奴だと思うよ。
家賃はこいつ持ちだし。
俺が家事代行をするようになってからは金に余裕が出来たようで雄っパブをさっそく辞めてきた。
その際のこいつの誇らしげな顔で言った台詞は今でも忘れない。
『これでこの雄っぱいはカオルが独り占めしていいからな!』
いらん。
「そんな事言ってカオル俺の雄っぱい好きだろ?」
「……嫌いではないがもう触らないからな」
言われた通り、俺はこいつの雄っぱいは嫌いでは無い。
興味本位で触った雄っぱいは、筋肉で硬いかと思えば弾力があって少しふわっとしてて熱くて手に吸い付くようで……何と言うか、ぶっちゃけ気持ちいい。
だからつい夢中で触ってたらどんどん頭上から怪しいオーラが漂いだして、見上げると鼻息荒い目の血走ったダイチが居て本能で思いっきり後退った。
なんか、あのままだとヤバい気がしたから。
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