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2.雄っぱいは甘えたいらしい
そんな同居生活を送るある日の事だ。ソファーでくつろいでたら満面の笑みのダイチが寄って来た。
「カオル! 風呂沸いたぞ、一緒に入ろう」
「何でだよ入らねぇよ」
風呂の用意はダイチが唯一出来る家事だった。
だからなのか毎日嬉しそうに報告に来る。
「お前毎回それ言うよな」
「そのうちノリで入ってくれるかと……」
「どんなノリだよ入らねぇよ」
何が悲しくて家庭用の狭い風呂にムキムキ野郎と入らないといけないんだ。
デカイ図体でしょんぼりするな。
「何でそんなに一緒に入りたいんだよ……狭くなるだけだろ」
「……背中洗ってもらったりとかしてほしい……」
「甘えんなっ!」
アホか! 俺はお前のかーちゃんじゃねぇんだぞ!
「仕方ないだろ! 俺は……俺はだな、好きな子には全力で甘えたいんだっ!!」
「知らねぇよそんな性癖っ……は? 好きな子!?」
「ライクじゃなくてラブの方だ」
「ライクにしとけよ! 急に何なんだお前!」
もうスマホでバイトの求人サイトとか見てる場合じゃない。賃貸サイトを探そう。
「……カオル」
「な、何だよ……」
「一緒に風呂に入ってください!」
「土下座すんな!」
一旦実家に帰ろうかな。
……なんて考えて早くも一ヶ月。俺は未だにダイチと同居していた。
理由は二つ、大学から近くて家賃がタダ(ダイチが払ってる)だからだ。
そして俺は今、なぜあの時出ていかなかったのだろうと後悔している所である。
なぜなら、ダイチに押し倒されているからだ。
「……それ以上動いたらお前の事嫌いになるからな」
「き……嫌いになるって言うなら……」
「言うなら?」
「……泣くぞ!」
「どんな脅し文句だよ!」
すでに泣きそうな顔をしてるダイチにため息しか出ない。そんな俺の様子に必死にダイチは食らい付く。
「何で……何で俺じゃダメなんだ!」
「俺はかわいい子が好きなんだよ」
「じゃあ俺の事ルンルンって呼んでいいから!!」
「だから何でだよもぉっ!!」
お前がルンルンになったところでムキムキ野郎なのは変わらねぇだろが。
ムキムキなのも野郎なのもお断りだ。
「……いい加減どけって」
「……嫌だ」
「ホントに泣きそうな顔するな! 俺なんか片手で簡単に押さえ込めるくせにそんな俺なんかに泣かされてんじゃねぇっての!」
「……え?」
あまりにも情けない姿に呆れて思わず出た言葉。
これが良くなかった。非常に良くなかったのだ。
「おい!? 何してんだ……っ」
俺をベッドに押し倒したまま、俺の両手を頭上でまとめて片手で押さえられた。
抵抗しようとしたが、俺の力ではピクリとも動かなくて腹が立ったので睨みつけてやった。
「おっまえ……何の真似だよ!」
「いや……ホントに片手で押さえ込めたなと思って……」
「そうかよ良かったな! 俺を片手で押さえ込んだ感想は!」
「罪悪感がすごい」
「だろうな、早く離せ」
「でも……背徳感と征服欲でめちゃくちゃ興奮してきた……」
「今すぐ離せぇぇえっ!!!」
とんでもない発言に全身全霊をかけて抵抗したが、やはりこいつには微塵も効かなかった。
「か、カオル……っ」
「やめろっ、落ち着けっ! 鼻息荒くすんな! おい触んなって!!」
片手が自由になったのを良い事に、シャツの中に手を入れて弄りだすダイチ。
興奮のせいなのかいやに熱いダイチの手が腹や脇腹をなぞるとそこから火傷をしそうだ。
体の大きなダイチの手のひらはやはり大きくて、ひと撫でされただけで俺の上半身はほとんど触られてしまう。
「……っ、そこ、触んなぁっ」
俺の肌の感触を確かめるように滑っていた手が、だんだんとあやしい動きになり上部へ移動してくる。
そしてとうとう胸の突起に指先が触れた時、出そうになった声を必死で抑えて睨みつけた。
「カオル……そんな目で睨まれたら興奮するっ」
「知るかあほぉっ!」
「なぁ、ここも触らせてくれ……カオルも俺のを散々触っただろ?」
「散々って……一回だけだろ!」
「雄っパブでも含めれば二回だ」
「覚えてねぇよ!」
「カオル……」
「ひっ………!」
ダイチの手が、俺の平らな胸を包み込んだ。
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