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第2話「青い夕焼け」
「オマエってさ、だれかとつき合ったことある?」
オレンジ色に染まりゆく空を背中に感じ始めた部活の帰り道、悟史は前を向いたまま尋ねてきた。日光の影で顔はよく見えないがほんのり光が入りオレンジ色に肌が見えている。話し方は少し畏まっていて、少しぎこちなかった。正直言ってこんな悟史を見たのは小学校からの仲だが初めてだ。
「あるよ。」
いつもなら、なんだお前恋でもしてんのか?とか返していたがそんなの聞くまでもない。それに、冷やかせるような雰囲気ではない。
「…そうだんがあるんだけど。」
「うん。」
「じつはさ、オレ、好きな子がいるんだ。」
「…加奈子さんだろ?」
「な、なんでしって…」
勢いよくこっちを見た悟史はさっきよりも赤みがかかった日の光に包まれていた。似合わねー真面目な顔をしてじっと見つめてくる。
そんなん見てりゃわかる。わかりやす過ぎだろ。お前加奈子さん見過ぎ。話すときテンパり過ぎ。顔赤らめ過ぎ。手をもじもじさせ過ぎ。話すとき目ぇ見てやれよ。俺に助け求めんなよ。加奈子さん、あれどう見ても両思いだよ。分かれよ。この鈍感…
「ま、超能力ってやつかな。」
「ごまかすなよ。」
「まあまあ。んでいつからなんだよ?」
「な、なにがだよ。」
「何がってこたぁないだろ?この話の流れからして俺が聞きたいのはお前がいつから加奈子さんを好きなのかってことだよ。わかるだろ?」
「ぶ……だよ。」
知ってる。
「へ?なんて?」
知らないふり。
「文化祭のときだよ!」
知ってる。
「結構前じゃん!俺気づいたの最近だわ。なんだよもっと早く言えよー!」
知らないふり。知らないふり。
不意に着信音が鳴り携帯を見ると一通のメールが届いていた。
『こちら彩香。加奈子が悟史のこと好きらしいから協力して。まだ教室にいるから急いで悟史連れてきて。』
幼馴染みならなに頼んでもいいみたいのいい加減にしてほしいわ。けど、今回は丁度いい内容だな。しっかし彩香も相変わらず超鈍感かよ。こんなんだと悟史が加奈子さん好きなの知らないな?まあ、話してんの見れば流石に気付くだろうけど。
「…そういや悟史、お前物理の宿題やったか?」
「え?なにそれ。」
「おい忘れたのか!?提出明日だぞ!明日写そうとしたところで終わる量じゃねぇよ!どうせ手ぇつけてないんだろ?まだ多分学校空いてるだろうから急いでとってこい!机の奥にでも眠ってるだろうよ!」
勢いよく悟史の背中を押すと悟史は少しよろめいたが、すぐに体制を持ち直しこっちをちらっと向いてから走り出した。
「あとで写させてー!」
悟史は手を振りながら夕日に向かって叫んだ。
さっきまで悟史の背中に触れていた手をしばらくまじまじと見つめた後強く握りしめた。
「やっぱ足速いなぁ。」
いつのまにかもう悟史の姿は夕日に飲み込まれていた。追いかけようかとも思ったが行ったところで邪魔になるだけだ。
「あー!やっぱ言っときゃ良かったなー!」
すっかり赤くなった空を見上げて放った言葉は頬を伝って溢れ落ちた。
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