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第2話《特別攻撃隊員として》

華道の家元の四男として生まれ落ち、花が大好きだった僕は、生まれ変わったら名もなき花になりたい、と常日頃思っていた。 生まれつき男性器も女性器も持ち合わせて生まれてきた異形の子。 女の子が欲しかった母は小学校に入るまで、僕に女の子の格好をさせて育てていた。 左目の下に黒子のある母譲りの顔立ちの僕は、男の格好をしても小柄で細身だった事もあり、女性に間違われる事もしばしばだった。 そんな僕が花になる為に見つけた死に場所。 戦時下である今、跡取りである長兄を残し、ふたりの兄たちも出征し、御国の為にその生命をかけて戦っていた。 僕は最初からこの生命を花の様に散らす為、海軍飛行予科練習生になる事を決意し、難関と言われた試験に合格する事が出来た。 兄たちと同様、家の誉として家紋が入った短刀を渡され、肌身離さず持つよう言われて故郷を後にした僕。 そこで僕を待っていたのは、僕の異形の身体を知った教官による肉体関係の強要だった。 自らも出撃する可能性のある死と隣り合わせの極限状態の中、妻子とも引き離された教官にとって僕は欲求の捌け口だった様だ。 僕は望みを叶える代わりに身体を差し出すよう脅され、僕は死ぬ為にそれに応じた。 毎晩教官の宿舎に向かい、望まれるまま関係を持った。 辱められる事に僕は何の感情も抱かなかった。 予科練を経て、僕は教官の力で神風特別攻撃隊第五華風(はなかぜ)123部隊に配属される事になった。 けれど、教官から部隊長に申し送りがあった様で、そこでも僕は隊員でありながら男たちの相手をさせられた。 少しでも女に見えるよう、ひとりだけ髪を長く伸ばす事を許され、教官だけでなく仲間からも要請があればそれに応えた。 いつか消えてなくなるこの生命だから。 僕にとって、自分の生命ほどどうでもいいものはなかった。

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