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第49話

「ありがとう、純一君。もう、これで思い残す事はないよ」 服を着ると、士郎君は笑った。 「君は城の外に出て、ユープ隊長が来るのを待っていて。俺は……ここで大好きな花に囲まれて死にたいんだ……」 「士郎君……」 僕も服を着て、泣きながらその身体にしがみつく。 「純一君、大丈夫だよ。俺たちは2度も逢えたんだ。また逢える日が必ず来る。その時は……誰も憎まず、誰にも憎まれず、誰からも愛される俺になって君の傍に帰って来るから……」 そう言って、士郎君は僕に口付けると、僕から離れていく。 「さぁ、行って、純一君」 「士郎君……っ……」 僕に背を向ける士郎君。 もう、振り返る事はないんだろう。 「…………っ!!」 僕も士郎君に背を向け、庭を後にした。 城の入口辺りまで移動した頃、庭の方から銃声が聞こえた。 僕は……来た道を引き返していた。 「士郎く……」 庭の、ステアの花の前に、士郎君は倒れていた。 まだ温かい身体。 けれど、胸から大量の血を流しているその心臓は止まっていた。 「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!!」 血がついていたけれど、その顔は安らかで、笑っているように見えた。 「ジュンイチ!!」 僕が士郎君の身体に縋りついて泣き叫んでいると、ユープの声が背後から聞こえてきた。 「ユープ、僕は……僕は……っ!!」 「コーバス殿から話は聞いた。何も心配しなくていい……」 僕を優しく包んでくれるユープの身体。 この腕の中で他の男の事を考えて泣いているのに、ユープは僕の髪を撫で、背中をさすってくれた。 「サンデル殿」 僕を腕の中に収めながら、ユープはもう動かない士郎君に深々と頭を下げた。 「ジュンイチの生命を守って頂き、心から感謝致します。俺は貴殿に代わり、必ずジュンイチを幸せにします」 「ユープ……」 その横顔を見ていると、急にお腹が痛くなっていく。 「うぁぁぁぁっ……!!」 今まで感じた事のない痛みだった。 これが……陣痛……?? 「ステアさん、大丈夫ですか?ちょっと見せて下さい……」 お腹を抱えてうずくまっていると、コーバスが駆け寄ってくる。 「これは……もうすぐ産まれるかもしれません。ユープ殿、手伝って下さい」 「あ、あぁ」 僕のお腹を触ったコーバスはこう言って、ユープに次々と指示を出していった。 その日の夕方、僕は士郎君と一緒に寝ていた部屋でふたりの男の子を産んだ。

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