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第50話《終幕》
士郎君の死から5年が過ぎていた。
ローツは士郎君のお陰で共和国としてズワルツから独立し、イベリスさんが初代大統領となっていた。
僕とユープはサンデルを死に追いやったという事でイベリスさんから許されて結婚しただけでなく、士郎君から託された城とその周りの地域を領地として与えられた。
ユープは領地をサンデルと名付け、僕らより先に住んでいた人々を大切にしてサンデルを発展させていった。
「ははうえ、いま、おなかがうごきました」
「そうですね、貴方達にご挨拶をしたのでしょう」
僕は今ユープとの子を身篭っていて、今回もふたりの男の子とコーバスから言われていた。
亡命したコーバスはユープの家臣になり、この城でサンデルの医師として一緒に暮らしている。
僕のお腹に小さな手と耳を当てる子供たち。
銀色の髪に褐色の肌をしたふたりは、先に産まれた子がユープと同じ青い瞳で、顔立ちもユープによく似ていた。
跡継ぎという事でウォルフ族のしきたりに従い、名前は父親と同じユープと名付けていた。
後に産まれた子は僕と同じ黒い瞳で、その顔立ちは……。
「ははうえ、あかちゃんのおなまえ、ぼくたちにきめさせてください」
「ユープ、父上に言われているでしょう?名前は父上と母上とで決める事になっていると」
「えー、でもふたりもいるならひとりくらい良いでしょう?ね?シロウ」
「あにうえのいうとおりです。ぼくたちもあかちゃんにかっこいいおなまえをつけたいです!」
息子のユープを窘めようとすると、後に産まれた子……シロウが兄を援護しようとする。
僕じゃなく、士郎君に似ている顔立ち。
「ユープ、シロウ、気持ちは分かりますが、貴方たちが親になる時まで名前をつける事は出来ませんよ」
「そんなぁ!」
「ははうえ、さいしょのあかちゃんはちちうえとおなじおなまえってきまっているんですよね?ぼくのなまえはどうきめたのですか?」
落胆しているユープをよそに、シロウが僕に尋ねてくる。
「それは人それぞれですが、貴方の場合はこの国を思い亡くなった英雄の名前から名付けましたよ」
「えいゆう?」
「……ここに眠っているとても立派な御方です。貴方達が毎日楽しく生きていられるのは、この方が生命をかけてくれたお陰である事、絶対に忘れてはいけませんよ」
「「はい、ははうえ!!!」」
子供達をそのお墓の前まで連れてくると、僕は言った。
庭の中央、どこからでも花を楽しめるその場所に僕はユープ、コーバスと共に士郎君を埋葬し、墓を立て、その周りには士郎君がサンデルとして愛したステアの花を沢山植えた。
『誰も憎まず、誰にも憎まれず、誰からも愛される俺になって君の傍に帰って来るから……』
ステアの花を見つめながら、僕は士郎君の言葉を思い出していた。
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