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第9話
次の夜。
晶と光は揃ってバイトの日で、一緒にバイト先のダイニングバーに向かった。
「おはようございまーす」
光が開店前に元気に挨拶。
「おはようございます」
少し離れた背後で晶が真面目に頭を下げる。
「おはよう、光、晶」
店長の類は既に制服を身に纏い、2人に笑顔を向けた。
他、1人の男性社員、もう1人の女性のバイトも、おはよう!と挨拶を返す。
光と晶もロッカールームに向かい、制服に着替えた。
開店準備の掃除などを済ませると、
「あ、じゃ、俺、看板、出してきますね!」
光がOPENの看板を表に出しに行った。
2人は主に客のオーダーや飲み物や料理を運ぶ。
「光くーん!」
「あ、由香ちゃん、いらっしゃい!」
光目当ての数人の若い女性客が訪れた。
愛機がいい光には、多くの光目当ての女性客がいることを、晶は自身も働き始めて知った。
出逢いは晶の元彼、和典の浮気相手が光だったから。
ふと半同棲の和典の部屋に行ったら、ボクサー姿の光と出くわした。
光も、まさか、自分が浮気相手で、本命がいることを知らず、互いにウケ同士だったが、意気投合し、次第に惹かれ合い、今に至る。
(....光、ゲイなのに)
光に媚を売っても無駄だよ、と思うのに、女性客たちと笑顔で話している光を見ると、気分が悪い晶がいる。
「あ、す、す、すみません、お水頂けますか?」
光に注視していた晶におとなしそうな女性が声を掛けてきた。
「え、あ、はい、ただいま」
目を合わせないまま、晶はなくなった水を注ぐが、そんな晶をハートの眼差しで見つめている。
晶は気づいてないが、晶もまた、クールな美青年、とファンが出来始めている。
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