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第12話

「....もう店、来ないで」 光は思わず呟いた。 自分だったから良かったが、晶だけのバイトの日に和典が店に来るのは不安だった。 「なんだ?この店は客を選ぶのか?」 「....そういう訳じゃないけど」 類が居てくれたら、と心底願ったが、願いは虚しい。 類は既に店を辞めている。 「で?店、何時までだ?」 「なんのこと...?」 「久しぶりに会ったんだ、何処か飲み行こうぜ」 晶が待っているから早く帰宅したい、なんて言うわけにいかない。 「にしても、晶と仲良くなったんだな、バイト先が一緒だとか」 「....偶然だよ」 一方、晶は光のいない部屋で暇を持て余していた。 コンビニでも行こうか、と部屋着のまま、玄関を開けた。 偶然にも隣の住人も扉を開け、知る由もなかった、隣の住人に頭を下げた。 「こんばんは」 爽やかな笑顔にハッとした。 以前、光がよそ見をして歩き、ぶつかってしまった20代らしき男性だった。 偶然にも、その男性もビールを買いにコンビニへ行こうとしていた、と並んで歩く最中にわかった。 二人がかりで引っ越して来た際に、晶と光が仲良く手分けし、隣に引っ越して来たことも知っていた。 「大学時代、家賃を浮かせる為にシェアしていた友人もいたからね、懐かしいというか、初々しいというか」 優しい笑みを見上げた。 「今日は友達は一緒じゃないの?」 「え、あ、はい。バイトで」 互いにビールと摘みを買い、部屋に入ろうとしたら引き止められた。 (....やっぱり、この人もゲイで、一緒に飲もう、て言い出すのかな) 警戒していた晶だったが、ビニール袋いっぱいのみかんを渡されただけだった。 「実家から大量に送られて来てね、食べきれないくらい。良かったら二人で食べて」 男性の笑顔に、光の言う通り、悪い人ではなく感じた。

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