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第13話
『お店の人とちょっと飲んでくる』
隣人の男性から頂いた大量のみかんはテーブルに置き、晶は部屋で1人、テレビを眺めながらビールを傾けていると、そう光からLINEが来た。
店長の類が店を辞め、落ち込んでいる光を知っているが故に、
『わかった。たまには羽根伸ばしてきなよ、でも、飲みすぎないようにね(*^^*)』
返信された晶のLINEに光は複雑な思いだった。
和典は途中、帰ったかと思いきや、私服で出てくる光を待ち伏せしていた。
『光、お疲れさん』
てっきり、光の友人とばかり思ったバイト仲間たちは、
『またな、光』
『お疲れー』
取り残された光は致し方なく、和典と話すしかなかった。
『そんなに俺に来て欲しくないわけ?』
和典に、光はごめん、と謝った。
晶に会わせたくない、会わせる訳にいかない。
『....わかった。だったら、飲み行こうぜ、飲みに付き合ってくれたら、もう行かない』
『....ホントに....?』
『ああ』
そうして、光は知らない、和典が行きつけらしい、こじんまりとした小さなバーの片隅に座っている。
隣には和典。
「お前、好きだったよな?カルアミルク」
こくん、と目を合わせないまま、頷いた。
和典がビールとカルアミルクを店員に頼んだ。
「とりあえず、乾杯しようぜ」
乾杯する気持ちにはなれなかったが、渋々、乾杯をした。
ゆっくりカルアミルクを飲んだ。
「悪かったと思ってる」
「....何に対して?」
「お前に対して」
テーブルを見つめていた光の目が驚愕で開かれた。
「....俺に対して?」
「ああ」
晶に対して、ではないの、と光は怒りと戸惑いを覚えた。
その勢いでカルアミルクを飲むペースも早まる。
ロングカクテルの半分ほど飲んだ辺りで目眩がした。
(....酔った?)
たった、カルアミルクを半分、飲んだだけなのに?
次第に朦朧とし、光の意識はそこで途絶えた。
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