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第16話

徒歩で光は晶と住むマンションに辿り着くなり、しばらく、マンションを見上げた。 涙目の瞼を手の甲で擦る。 晶に心配を掛けたくない、いつもらしく振る舞わなきゃ。 「光、おかえり!」 玄関のドアを開けると、もう深夜二時過ぎだというのに、明るい晶の笑顔に出迎えられた。 「晶....」 思わず、ギュッと光は晶を抱き締めた。 『あいつ、晶はさ、お前と出逢うよりも先に出逢ったけど、下の世話しか出来やしない、愛想もなけりゃ、すぐにヤキモチ妬くは、嫉妬する、正直、面倒くさくてさ....』 和典が言い放った言葉を容赦なく思い出し、更に強く、晶を抱き締める力が強まった。 呆然としていた晶だったが、 「どうしたの?光、飲みすぎ?」 大好きな晶への散々な文句。 そうして、嘘か本当かわからないが、和典にとって、本命は自分で浮気相手は晶だったこと。 晶に話し傷つける訳にいかない。 光は晶を抱き締めた肩越しで唇を噛み締めた。 「....晶、もうバイト辞めない?」 晶を離し、光は切り出したが晶はポカンとした。 「辞めるって....お互いに?」 うん、と光は晶の両肩を持ち、頷いた。 「バイト辞めたら生活できなくなるじゃん」 「すぐに見つけたらいい」 「すぐにったって....光どうしたの?」 光は俯いてしまった。 類が辞め、ショックなのはわかるけど、今日、飲みに行っても光はまだ類がいない現実から目を背けられないのか....。 晶は晶なりの解釈で、光を優しい瞳で見つめた。 「....わかった。でもさ、辞めてから探して見つからなかったら大変じゃん?ちゃんと計画、立てよう?ね?」 光の顔を覗き込み、至って明るく務め、晶は光を窘めた。 「....うん」

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