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第18話
和典は帰り際。
「光によろしく伝えといて。あ、あと返事も早くってな」
「....返事?」
会計を済ませ、見送ることになった晶は和典を見上げ、不審な目を光らせた。
「付き合おうって話しだよ」
晶は言葉を失った。
和典はまるで、光だったら、そのまま一緒に帰るか、飲みにでも行くかのようなタイミングで店に来た為、残りの勤務時間は僅かだった。
頭から光と和典への疑問が疑心暗鬼に変わりつつある中、勤務は終わり、店を後にした。
「光!」
息を切らし、玄関を開けるなり、晶は怒鳴る。
「晶....おか....」
勇み足の晶に平手打ちされ、言葉は宙を舞った。
「なんで嘘ついたんだよ!」
「....なんの話し?」
「和典と飲みに行ってたんだってね!」
光は黙りこくった。
「なんで騙したの!?」
「別に騙した訳じゃ....」
「じゃあ、なんで、なにも話してくれなかったの!?」
「....それは....」
晶を傷つけかねない言葉を飲み込んだ。
晶は自分が本命だと思っている。
そして....。
和典が晶に抱いていた感情は光にとっては許しがたいものだった。
和典はこれでもかと晶の文句をつらつらとのさばったが、自分にとっては晶の駄目な部分すら愛おしい。
「黙ってちゃわかんない!なに!?和典とのことをわざと話さないで、こっそり和典と付き合おうって作戦!?だから、昨夜、変だったのか、そっか」
早口に捲し立てる晶を光は泣きそうになりながら見上げた。
「店を辞めようってのも、俺を和典に会わせずに自分が和典と出来ちゃってたからか」
から笑いする晶だったが、目には涙が浮かんでいる。
「晶....」
「もういい!」
晶は一方的に感情に任せ、光に告げ、部屋を出た。
部屋を出た晶は無意識に隣人である橋口のドアの前に立ち、インターフォンを押した。
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