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希う

確か二年程前の春だ。 今でも覚えてる。 彼との出会いを。 見つめられた時の顔を。 かけられた声も。 昨日の出来事のように、鮮明に記憶に残っていた。 何一つ欠けさせる事無く、此の世で最も美しい絵を脳裏に浮かべる事が出来る。 自分と言う輪郭が朧気になるまでに、全神経が視覚と脳だけに集中し彼を模る。 はっと目が覚めるような、それなのに意識が奪われるような感覚に足元がおぼつかなくなる。 酩酊するような恍惚を与えながらも、暴力的な程強引に瞼に食い込む存在。 生まれて初めての未知の感覚。 満開の桜の中、乱舞する花びら。 淑やかな春の花よりもなお麗しい彼の姿。 ――運命だと、心の底から思った。

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