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第1話

自分は駄目な子だとよく言われていた。 何をしても駄目な人間だと自分でも分かっていた。 他人に言われなくても――誰よりも理解していた。 勉強も運動も平均以下、そして体も弱い。 風邪を良くひき、季節の変わり目には必ず熱を出す。 おまけに、鼻血を良く出す子供だったことも有り、食事会や茶会と言った人が集まるイベントごとも不安が先立ち苦手だった。 熱ならばまだ良い。 鼻血は最悪だった。 何もしていないのに鼻の付け根からぬるりと何かが落ちて来る。 すると、あぁ、来た。と一気に憂鬱になる。 突然前触れも無く、出血したのは一度や二度ではない。 学校や外出先でも良くあることで、その度に恥をかいたり周囲に迷惑をかけて謝ってばかりで情けない思いをしたものだ。 鼻血が止るのも三十分から一時間かかる事も有った。 病院には行ったことは無い。 行けば何か治療が有ったかもしれないが、たかが鼻血だ。 病院に行く程の事でもないと自己判断し、時折周囲に迷惑をかけながら時が過ぎた。 最近は嘘のように鼻血とは無縁の生活なので、単純に鼻の粘膜が弱かったのだろう。

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