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第6話

誰も彼もが浮かれていた。 それに相反して、自分だけは冷めていた。 不愉快といっても過言ではない程に嫌だった。 そんな大事な相手――しかも子供――をこの家に招くだけで、大騒ぎになる位なら、ホテルでも老舗料亭でも他に場は山ほどあるだろう。 接客のプロが揃っているのだから、慣れぬ持て成しで大騒ぎの我が家よりは、万が一などと言う失敗も無いはずだ。 遠まわしに口にしたら兄は 「お前、自分よりも格下の相手と付き合う場合、相手がどんな家に住んでいてどんな生活していて、どんな教養の持ち主なのかとか書類だけで分かるのか?実際目にしないと不安だろうが」 と頭の悪い自分に分かりやすいように、子馬鹿にしながらも教えてくれる。 だが最も知りたい事は分からなかった。 巨大企業を経営する一族本家の子供が訪問をする。 それだけだ。 何故、そこまで値踏みされなくてはならないのか。 意味不明だ。

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