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第14話

誰も助けてくれない。 ――誰でも良いから、誰かに助けて欲しかった。 いつもいつも、そう思っていた。 誰よりも自分を気にかけて、優しく笑いかけてくれる相手が居れば良いのに。 無条件に自分を認めてくれる誰かが目の前に現れたら良いのに。 自分を理解してくれる誰かが側に居てくれたら、きっとそれだけで救われるのに。 現実逃避だと分かっていたが、何時からか顔の無い「誰か」が自分を助けてくれる夢を見て自分を慰める事に夢中になった。 自分の味方である唯一無二の「誰か」の事をまだ見ぬ婚約者のように夢想した。 「誰か」は、同じ年齢の少女だったり少年だったり、または年上だったりと性別も年齢もその時により変わっていたが、自分の理解者であり特別な存在にしてくれる事は変わりなかった。 幾度となくそんな「誰か」を想像し空想の中で何度も手を伸ばす。 すくい上げて欲しいと伸ばしても、空を切るばかりだ。 それが現実だった。 自ら閉ざした世界に居る自分の目の前に、そんな都合の良い相手が現れる筈もない。 誰かと話すことは傷付けられる事だから。 人間関係を築く事は、劣等感を生み出す行為だから。 家の外でも家の中と同じで閉じこもってる方が楽だった。 全て否定から始まっていたので、他人と打ち解けようと試みるのは困難で想像するだけで神経が磨り減る。 だから積極的に人間関係を構築することはしなかった。 当然の事乍ら家だけでなく、学校でも常に一人だった。 小学校から中学校へ進学してもそれは変わらない。 登校も下校も一人だ。 友人同士で喋りながら家と学校を往復する生徒を尻目に、一人で通学を続けた。 移動教室も、体育でグループを作るときも、昼食も、休憩時間も、ずっと一人だった。

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