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第8話

「初めまして、朝比奈 錦と申します」 黒目がちの瞳を縁どる睫の艶やかさ。 サラサラと風に流れる素直な髪。 赤ん坊の様に肌理の細かい皮膚。 淡い、それこそ咲き誇る桜の花びらよりも可憐な唇。 幼い少年特有の透明度の高い声。 小さな白い指に貝殻の爪。 指先まで綺麗で胸が高鳴る。 手の届かない場所で煌めく星そのものだった。 雲の上の存在が今、自分だけを見つめている。 様付けで呼ばれ皆に傅かれる、そんな彼がすぐ目の前に立っている。 そうして、手を差し伸べてくれたのだ。 誰でも良いから、誰かに助けて欲しいといつも願っていた。 幾度となく描いた空想の世界で伸ばされる救いの手。 そんな誰かが居ればと良いのにといつもいつも思い描いていた。 すくい上げて欲しいと伸ばしても、空を切るばかりだった。 それが現実だった。 でも、出会えたのだ。 知らず笑みが浮かんだ。 彼だ。ずっと求めていたのは彼だったんだ。 思い描いていた「自分を助けてくれる誰か」が目の前の彼と重なる。 空を切る手を握り返すのは、彼だったのだ。 ――祈りが届いた。そう思った。 これが朝比奈 錦との出会いだった。

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