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第6話
「私は誰が歌っててもソプラノ歌手の声の区別が正直つかないな。兄さんは?」
笑いながら幼い少年たちの話を聞いていた兄が、話しを振られて
「『復讐の炎は地獄のように我が心に燃え』ならマリア・ガルヴァニーだな」
即答したが、やはり誰だか全く分からない。
自分以外の皆は理解している様だ。
「意外だわ。兄さんあぁ言う機会みたいな声苦手なのかと思った」
「機械的とか言うな。バイオリンみたいなソプラノに鳥肌が立った。まぁ、歌手と言えばマリア・カラスが断トツなんだけどね」
錦は同感ですと答える。
兄が錦に微笑む。
「同感なのはどっち?」
どちらも、そう錦が言葉を続ける。
「マリア・ガルヴァニーの歌唱技術の高さに驚いて、途中から高音域を楽器演奏してるのではないかと勘違いしそうになりました」
兄が「分かる。途中で楽器を弾いてるのかと思うよね」とクスクス笑うと、錦は少し恥ずかしそうに眼を伏せる。
親密さが増し、酷く気分が悪くなる。
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