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第4話

胸を締め付けられ、息苦しさに喘ぎながらも独り立ち尽くす。 気が遠くなる様な孤独感に苛まれ、錦も同じ孤独を味わっているのではないかと夢想する。 同じ感覚を共有している錯覚に陥りながら、快と苦痛を往来する。 袋小路で蹲りながらも、錦にかけられた言葉がこの心を生かし続けた。 彼との思い出だけで生きながらえた。 巡る季節の中で自分は、生きていた。 逢えない時期を過ごしたのは初めてではない。 一時とは言えあれ程までに錦との別離を苦しんだ筈なのに。 不思議と壊れる事も無く正気のままで生きていた。 強くなったのではない。 錦との思い出だけで耐え忍んだ。 あの時は錦と永遠の別離になる事を覚悟したが、今は物理的に会えなくなっただけだ。そう思える程度には、錦の言葉と同じ空を見ているだろう彼の存在が己を生かし支え続けた。

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