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第8話

夏休みはいつも憂鬱だったのに、いまはとても楽しみだ。 海輝が帰省する予定は八月中旬からだ。 現在は朝比奈家に紹介された仕事と、元々掛け持ちしていた家庭教師や塾講師のアルバイトが忙しいようだ。 七月二十一日から夏休みだから、一週間もあれば全教科の課題と読書感想文まで余裕で終わらせることが出来る。 八月一日から練習を兼ね菓子作りする予定だ。 夏休みとは言え忙しい中帰省するのだ。 彼を労う必要がある。 錦が海輝に出来ることは何か無いかと考えて、冷たい菓子を振る舞うことを思いついた。 きっと喜ぶ。 海輝の喜ぶ姿を思い浮かべながら、最初は店を調べていた。 洋菓子店、カフェ、デパートのフロアガイドまで。 学習用のパソコンでカットケーキの目立つウェブサイトを胸焼けしそうな思いで見続けていた。 暑い日が続くと、ひんやりとした喉越しの良い菓子が良い。 ゼリーなら一緒に食べることが出来る。 目当てのゼリーを探しながら、数々のスイーツの画像を見ていると何となく作れそうな気がしたのだ。 そんな事を考えているうちに、手作り菓子を振る舞いたいと思い始めた。 レシピを調べてみれば思ったより簡単そうだったので、挑戦したくなった。 ――そうだ。夏休みで時間もある。作れば良い。 錦は食事制限がかけられているため、菓子によっては味見が出来ない。 限られた選択しかできないのであれば、購入した方が良い気もする。

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