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恋人−1−

結婚式での2人は本当に幸せそうだった。 結婚なんてまだまだ先のことだと思っていたのに、今はより身近に感じられる。 ー恋人もいないってヤバくないか?  自分の恋愛遍歴を何回さかのぼっても、付き合ったことない年数イコール年齢だった。 そんなことを考えていると、純が学食に来た。 「何だよ、ボーッとしちゃって」 「俺だってボーッとする時くらいあるし」 「ふーん」 全然興味ないといった表情だった。 「なぁ、恋愛ってどうすんだ?」 純は飲んでた紙パックのミルクティーを吹き出しそうになっていた。 「い、今なんて?」 「だから恋愛ってどうすればできるんだ?」 「僕が相談したとき、あんなに色々アドバイスしてくれたのに、自分のことだと分からないの?」 「···だって今まで付き合ったことないし」 「そういえば、そうだった」 「ずっとバスケ一筋だったから、そういうの分かんないんだよ」 中学から始めたバスケは大学でも続けていて、暇さえあれば練習していた。身長も毎年5cm以上伸びて、今は187cmある。テレビか何かで、街頭調査をしたところ彼氏の理想的な身長は185cmまでと言っていて、落ち込んだ記憶がある。 「恋人ほしいの?」 「うーん···どんなもんか経験してみたい」 「それは相手に失礼だろ」 「それもそうだなー」 気付いたら午後の講義まであと5分で、急いで昼飯を腹に入れた。 「毎回食べっぷりにびっくりするよ」 半分呆れ顔で純が呟く。 「講義行こう。遅れるぞー」 リュックを背負って走り出した。 最後の講義が終わってバイト先の居酒屋に向かうと店長から新しいバイトを紹介された。 「えー、新しく入った拓海君です。努、同じ学部みたいだから色々教えてやって」 「あ、はい。分かりました」 ー同じ学部?見たことないけど··· 拓海と紹介された人は小柄で眼鏡をかけていた。 同級生ではないと思って、学年を聞いてみると俺とタメだった。 「大学ちゃんと来てる?」 「···」 「おーい、聞こえてる?」 「···聞こえてます」 「タメ語でいいのに」 「···あの、着替えたいんですけど」 「あ、ごめん」 明らかに話すのがストレスといった顔で横を通り過ぎた。 ーそんなに嫌がらなくてもいいのに ふと目を向けると、隙間から真っ白な肌が見えた。

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