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第3話
セイジュ少年17歳の苦悩、それは大体こんな感じだ。
——これは皆、俺が人間だと知らないからだ。
彼らが好いてくれているのは『吸血鬼のセイジュ』。
素の俺、ランク最下層『人間のセイジュ』ではない。
胸が痛む。
彼らが真実を知ったら、と思うと眠れなくなる。
俺は彼らを騙している。膨れ上がる罪悪感。
それでも俺は笑顔を作る、ウォルズ王国で生きていくにはこれしかないから……。
(セイジュの心の声終了)
農作業を終え、セイジュは漆喰の壁でできた自宅に戻り、一息ついた。
そもそも彼がコスプレのモデルとして吸血鬼を選んだのは、
・人間でも擬態できる
・長時間その格好でいられる
・メンタル面に影響しない
という条件を設け熟慮した後、コウモリ男か吸血鬼か脳内決戦した結果、吸血鬼が勝利した、という経緯がある。優勝おめでとうございます吸血鬼選手!
もともと色白で華奢だったことと、口が若干裂け気味だったを理由に、四六時中逆十字のネックレスをし、自前の吸血鬼っぽい犬歯をはめ、王都のコスメショップで『飲んでも食べても色落ちしない♪ 長時間ステイルージュ★』のブラックを箱買いして塗りたくり、黒いケープ(もちろん裏地は赤)を纏っている。
だが——
セイジュは想う。
俺は普通の吸血鬼より早く老いる。すぐ死ぬ。たった数十年で全身しわだらけになる吸血鬼なんていない。
いつか、数十年経てば人間だとバレる。
その時、ヴィネや他のみんなは、どう思うだろう?
(セイジュの心の声終了)(再度)
しかしその翌日、農具を買い足しに王都ラリーハリーに赴いたセイジュは、そんな懊悩が木っ端微塵となる『きっかけ』を耳にすることとなる。
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