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第4話
翌日、王都ラリーハリーで買い物をしていたセイジュは、何だか妙に混み合っているな、空気が緊迫しているな、と肌で感じていた。
——国王直々の宣言だとか……
——俺は王妃だと聞いたぞ?
——宣言、としか聞いていないが、命令だったら嫌だな……
そんな声が耳に入り、彼は思わず、街の中心部にある王城を見遣った。
言い忘れていたが、古き時代からこのウォルズ王国を統べてきたのは、神様でも何でもなく普通の『悪魔』の一族である。
現国王オルディンは、若い頃は武闘派の悪魔として他国に恐れられていたという。
何か発表があるなら聞いて、村の仲間に知らせようと思ったセイジュは、王城に近付こうとした。
しかし何しろ人が多く、歓声が上がり王家の面々がバルコニーに姿を現しても米粒くらいのサイズにしか見えなかった。
「親愛なるウォルズの民よ」
これは魔法だ、とセイジュは察知する。オルディン国王の声が、耳元で聞こえるくらいハッキリと理解できたからだ。
「本日は他でもない、我が息子、つまりウォルズ王国次期国王からの宣言をひとりでも多くの民に伝えようと集まってもらった」
王都に近いとはいえセイジュは農村在住で情報に疎い。
だから今も、
『ん? ああ、そういえばオルディン国王にはお子さんがいらして、息子ということは、現王子を指すのだな』
と、ぼんやり理解した。案外抜けてんな、こいつも。
「愛すべき我が民よ」
次に聞こえてきたのは若い兄ちゃんの声だった。これが王子様の声か、とセイジュは思った。
「俺は父上のように弁が立たぬ。よって、ざっくばらんに言わせてもらうぞ」
数秒後、セイジュの位置からはよく見えなかったが、前方では明らかにどよめきが起こっているのが分かった。おそらく声が届くのにタイムラグがあるのだろう。
そして数秒後、彼はその『宣言』を聞いた。
「俺、婚活する」
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