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第48話:堕ちた愛

「ヴィネ! 助けに来てくれたの?!」 「セイジュ、声をあげるな」  その声は冷徹に響いた。 「ヴィネ?! どうして、どうやって?!」 「声を出すなと言った」  その表情は、セイジュが知っているものではなかった。  あの、いつも穏やかで優しく、慈愛に満ちた瞳は完全に消え失せ、顔面から表情というものをぼとりと落としましたと言わんばかりの、完璧な無表情。 「ヴィネ……?」  小声でセイジュが問うと、 「すまないセイジュ、もうこうするしか手がないんだ。おまえのためだ、おまえのためなんだよ」  そう言って、ヴィネはセイジュに覆い被さってきた。  驚きで一瞬固まってしまったが、これは危険だと流石のセイジュも察知した。ヴィネの眼は血走っており、そこには狂気的な赤い光が見えたからだ。 「ヴィネ! どいて! やめてよ!」 「愛してるんだ、セイジュ」  そう言うと、ヴィネは涙を流しながらセイジュのシャツを引き裂いた。

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