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第51話:気づいたことに気づいた
「つぼみが……!」
住民に避難指示を出しながらアヴィと共に王城の近くを飛んでいたクロイゼンが、驚いた声でそう言った。
「あ? 何の話だ?」
アヴィがクロイゼンの顔を見遣ると、クロイゼンはなんと心の底から歓喜の感情を顔に映していた。
「おいクロイゼン! おまえこの非常事態に何笑って——」
「アヴィ、フラフィを覚えてないか?」
「忘れるわけがないだろう! ガキの頃からおまえの宝箱で、よく俺の宝物も勝手に突っこんでたもんな、あのでけーふわふわした亜空間に——って、え?」
アヴィが何かに気づいた様子で目を見開いた。
「クロイゼン、おまえまさか——」
クロイゼンは進路を王城に変更した。
「あの中にセイジュくんを入れたのか?!」
「セイジュの自由意志で入れるようにした」
「じゃあ『条件』は何だ? フラフィは『条件』をクリアしないと内部に侵入する入り口は開かないだろ?」
アヴィがそう問うと、クロイゼンはこの非常事態時に、空中を三回転ほどしてアヴィの横に並んだ。
「王城へ行くぞ! 鬼でも堕天使でも連れてこい! 今の俺は無敵だ!!」
「だからクロイゼン! 『条件』ってのは何だったんだ?!」
クロイゼンはさらに高い位置まで飛び上がり、また回転しながら舞い降りた。浮かれている、明らかに浮かれている。
「条件は、セイジュが俺に愛情を持ち、それを自覚することだ」
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