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第50話:Confession

「ヴィネ! こんなの」  言い終える前に口を塞がれた。舌を入れまいと歯を食いしばった。  なぜか嫌だった。あんなに親しい友人だったヴィネなのに。   ——嫌だ、嫌だ、嫌だ!!  心の中で必死に唱えようとも、ヴィネの魔法で二人はベッドに舞い戻っていた。 「やっと、やっと結ばれる……セイジュと、この俺が……」  ヴィネは涙を流しながらセイジュにまたがり、胸部を触り始めた。  怖気がした。  乾いた手のひら、押さえ込むかのような愛撫、腹にぽたぽたと垂れるヴィネの涙…… ——違う、違う!! 「ヴィネ! 俺、嫌だよ!!」    大声でそう叫ぶと、一瞬ヴィネの動きが止まった。 「嫌、とは」 「嫌なものは嫌なんだ! ヴィネのことは親友だと思ってた! 本当にいい友人だと思ってた!! なのになんでこんなことするの? 俺のこと愛してるとか言うならなんで俺が嫌がることするの?!」 「だからセイジュ、こうすればおまえは自由になれるんだ……」  ヴィネは恍惚とした表情で言い、セイジュの下腹部を撫で始めた。 「俺はここでいい!!」  セイジュは再び叫ぶ。 「ヴィネ、俺はここに残る!」 「何を言っているんだ? クロイゼンに魔法でもかけられたか?」 「クロイゼンは、俺の嫌がることはしない! 俺を傷つけない! 俺に優しい! 自分勝手に無理矢理襲ったりしない!!」  ヴィネは愕然とした表情でセイジュを見た。  セイジュはセイジュで、自分でも止められない真情の吐露を続けた。 「そりゃ、最初は嫌だったよ。でもクロイゼンは俺を対等な存在として扱ってくれる! 『伴侶』って言ってくれる! 俺に触りはするけど、もっと優しく、俺が気持ちよくなるように触れてくれる! 今のヴィネみたいに自分だけのためじゃない!! だから俺は——」  一度そこで深呼吸をして、セイジュは口を開いた。 「……俺は多分、クロイゼンが好きなんだと思う」  セイジュが呟くように言った瞬間、ポケットの中からオフホワイトの何かが飛び出してきて、ヴィネとセイジュの間で光り始めた。  無言で睨み続けるヴィネに対して、セイジュは驚いてきた。これは、先ほどクロイゼンが渡してきた小さなタンポポの花のような物体だ。  それはその体積をどんどん膨張させ、人ひとり入れるほどに膨れ上がった。  そしてその光は徐々におさまり、何が残ったかというと、 ——なんかでっかいふわふわだった。

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