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第二話『ならば共に来るか?』
『桜の樹の下には死体が埋まっている』なんてよく言うから、実はチョットだけ怖かったんだ。
でも、この桜の樹の下にはシロが眠っているんだね。
そう思うとこの桜の大樹がシロに思えてきて、少しも怖くなくなるから不思議だ。
小さい頃からいつも一緒だった。
僕よりもずっと大きな体で、近所のいじめっ子からも護 ってくれたっけ。
僕がピンチの時、どんな時も絶対にシロが助けに来てくれた。
僕が心の中で強く呼べば、顔を上げるともうシロが飛び込んで来たよね。
人には視 えない黒いモヤモヤに襲われたり、どこからか手だけが出てきて僕の腕を掴 んだりした時も、シロが咬 みついてやっつけてくれたもん。
だから、怖くなかったんだ。
全身真っ白な毛並みで、ピンと立った耳。
フサフサのシッポ。銀色のキリッとした瞳。
狼みたいって言われていたよね。
実際、狼だったのかもしれないね。
僕はみんなと違うこの見た目のせいでよくいじめられたっけ。
視 えたり聴 こえたりするせいで、僕は人とは違う動きをする。
だから、気味悪がられて友達も出来なくて。
高校生になってからは、もう自分からは誰にも話しかけないようにしてきた。
友達なんてどうせ離れていくのなら最初から作らない方がいいもの。
僕の友達はシロだけだった。
これからもずっとそれは変わらないと思っていた。
ずっとずっと一緒にいてくれるんだって思っていたんだよ。
春夏秋冬この桜の樹の下でシロと一緒に過ごした。
なのに、今シロは僕の側にいない。
僕は桜の樹を見上げ目を細めた。
御神木 と言われるだけあって、圧倒されるほどにたくさん伸びた枝には無数の小さな桜の花が咲き誇っていた。
見上げると薄紅色 に煙 っているようにすら見える。
ひらひらと心臓 の形の花びらが次々と降ってきて、僕はまた泣きたくなった。
一体樹齢何年なんだろう。
ぐるりと腕がまわらないくらい太い幹を抱きしめてみる。
「シロ……、そこにいるの……?」
また涙があふれてきた。
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2021.7.24
ニコ
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