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序『灼紅の神隠し』

首元に顔を埋めた赤鬼がれろっと僕の首筋を舐めた。  執拗に舐めながら時折ぢゅっと強く吸い上げられて、僕の身体はびくんっと跳ねる。 「……ん、アッ」 (何だコレ、力が入らない……。身体、熱い……?)  下半身が熱を孕む。  ハアハアと息が乱れる。  甘い声が出てしまう。  瞳が熱く潤むのが自分でも分かる。 「なんで、こんな……ッ!? やだ……。さわるな……ッ!」  僕は必死でそのゴツくて大きな手を振り解こうとジタバタとあがく。 「僕は、士狼(しろう)としか……ッ!」 「心配すンな、アイツより悦くしてやるよ」  赤鬼が僕の上にのし掛かり、僕の両膝を割り身体を押しつけてくる。 「な、何を……ッ」  赤鬼の大きな手が僕の服の上から身体を撫でまわす。 「んっ、……あぁッ」  そのもどかしいような刺激に甘い声が出てしまう。  さっき飲まされた薬のせいだろうか。  一体なんの薬!?  全然力が入らない。  頭も働かない。  身体が熱い。 (だ、ダメだ。このままじゃ……、どうしたら……ッ。士狼、士狼……! どうしよう!) 「やだぁ……ッ」 「そうか? 身体は全然嫌がってねえみてえだがな」  愉しそうな声音に僕は絶望で気が遠くなる。 「ふぇ、うえええ~んッ!」  僕はショックのあまりついにボロボロと涙を零した。 「……やだ、やだ、やだぁ……ッ!」 「泣くなって。最初はカラダだけでいい。その内ココロも貰うからよ」  そう言って赤鬼が僕の唇を奪う。  ダメなのに。こんなのぜったいダメなのに。  僕の身体はまるで自分のモノじゃなくなったみたいに甘く痺れて抵抗できない。  そして、その痺れは全身に広がり僕の思考に霞がかかる。 「リク、もう諦めろ。お前はこの鬼族の頭領百鬼(びゃっき)様の花嫁になるんだ」  大きな角が二本生えた赤鬼の緋色の鋭い眼が僕を射貫くように覗き込んだ。  ごめんなさい。ごめんなさい。  もう勝手に外に出たりしないから、だからお願い。 (助けて。士狼――――ッ!)  僕は心の中で愛しいひとの名前を必死で叫んだ。

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