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フラッフィが住む島 (1)

 日曜日の午前中、週に一度だけ、島と本土を連絡する船が到着する。  翠理《すいり》は防波堤に座って船着き場を眺めていた。  生まれつきの、艶やかな美しいホワイトブロンドは、毛先が緩くカールしていてふわふわと揺れている。 その頭には同じ色の、うさぎの垂れ耳のような形状のもこもこがある。  その垂れ耳は海風を受けて、ぴくぴくと小さく震えた。  実際の耳ではないので、うさぎのように遠くの音を聞いているわけではない。 そこは感覚の敏感な部位で、風のような僅かな刺激でも反応を示すのだ。  この島は、フラッフィが住む、フラッフィの島だった。  翠理も、その特徴的な頭部の耳からわかる通りフラッフィで、中でも垂れ耳はドロップと呼ばれる。 ドロップは絶対数が少ないフラッフィの中でも、一般的な立ち耳のレプスに比べてさらに珍しく、心も体も弱く生まれてきてしまう者が多い。  島には、許可を持ったヒトしか入ることができない。 そしてフラッフィは、この島を出ることができない。

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