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第3話

 そのうちに貞操を守ろうと固くしていた力が抜けていく。青年が足を開かせ、膝で股間を押したとき、体を埋める熱の心地よさに溶けかけていた理性がふっと帰ってくる。このままではまずいと青年を押し返そうとするが、その手は伸ばすのが限界で、まるで縋り付いているような形になる。 「ぅ……、そこ、っ……!」 「嫌? そんな触って欲しそうな顔してるのに?」 「ちがう、違う……!」  ぶんぶんと左右に首を振って暴れようとするセイランを見下ろしながら、青年はより歪んだ笑みを見せる。彼は伸ばされていたセイランの腕を掴むとそれを強く引き抱き寄せ、セイランの耳元に口を寄せた。 「ボクね、お兄さんみたいなお人好しの男をぐちゃぐちゃにするの、大好きなんだよねぇ」  どちらかというと愛らしく、色合いから儚げな印象すら覚えていた青年の口から放たれたとは到底思えない、低い欲を孕んだ声に、セイランは背筋がぞくりと震える感覚を覚えた。同時に押し殺していた欲が湧き上がる。青年の瞳を見た際に感じたものと同じ欲求。  犯されたい。  今すぐ、この男に、何もわからなくなるくらい、犯されたい。  まるで熱にのぼせたような、この先の快楽を求めるセイランの表情に、青年はほくそ笑む。セイランが大人しくなったことを確認すると少し身を離して、腰に手を這わす。その手は優しく横腹を撫ぜて、流れるように下肢に向かう。青年の細い指先は隙間から服の中に忍び込み直接腹に触れ、躊躇なく下衣を下ろしていく。出会ったばかりの相手に見られる部位ではないうえに、込み上げる熱でまだ何もされていないのに明らかに平常の様子ではないことも相まって、これまでに感じたことのないほどの羞恥がセイランの顔を朱に染めていく。 「んっ……、ぁっ……」  青年の指先が容赦なく陰部に触れ、適度な力と共に上下に動かされる。快楽を求めていたそこに与えられた刺激に、セイランは熱い吐息を孕んだ声を零れさせる。どうすれば強い快感を与えられるのか熟知しているような手つきは、セイランが息をつく間も与えず愛撫を進めていく。その触れ方はすでに欲情していたセイランに快感を覚えさせるには十分で、与えられる刺激に対して素直な反応を示してしまう。  羞恥心が早く熱を解放したいという欲に飲まれていく。白い指が自分の陰茎を愛撫していて、それに対してそこは順調に芯を持っていく。その様を見ていられなくて、セイランは下肢から視線を外して青年の方を見る。少し上にある青年の顔は、真っ直ぐにセイランを見つめていた。それはまるで愛撫されて感じているセイランを観察しているようで。セイランがそちらを見上げたことで視線が重なると、青年はふと満足そうに笑った。 「知らない男に扱かれて感じてるの?」 「ぁ……だ、だって……っ、ん、ぁッ」 「そうだよねぇ、気持ちくなりたくて仕方ないんだもんねぇ」  亀頭から溢れる先走りを絡め取りながら、青年は確実な快楽をセイランに与え続ける。青年に真っ赤な顔で甘い鳴き声をあげているのを見られているのが堪えられなくて、セイランはおもむろに両手を口にあてて両目を固く閉じ、青年の視線から逃れようとした。それが青年の思惑通りとも知らずに。 「ん、ふ……っ、んっ、……っ!」  上半身を縮こまらせて愛撫を受け入れていたセイランは、不意の感触に思わず息を飲む。それは、後孔に触れた指先の感触だった。 「そ、こは……」 「そうだね。もうちょっと前か」  セイランがすべて言い終わる前に青年は一度身を離したかと思えばセイランの両足を引っ張って尻を前に引き摺る。そうして大腿の半ばで止まっていた下衣を容赦なく引き摺り下ろそうとした。 「っ!」 「うん?」  セイランはその青年の手を咄嗟に止めていた。それにより下衣は膝で止まる形になる。これまで流されていたセイランの急なはっきりとした抵抗に青年は首を傾げた。 「それ以上、脱がさないで、ほしい……」 「……そう、」  ここで止めると不利益を被るのはセイランの方である。中途半端な場所にあるせいで、自由に足を動かせないはずだ。セイランもそれくらい理解している。それでも、セイランは不自由さよりも脱がされることを恐れていた。青年は特に理由は聞かず、それ以上脱がせることはせずにセイランの両足を曲げ膝を立てた状態で宙に持ち上げさせる。それによって完全に露出することになった秘部へ向けて、手を向かわせた。

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