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第14話

2ー2 口づけ 「何をしている?」 誰かが歩いてくる足音が聞こえて、俺は、顔をあげた。 「なぜ、泣いている?」 そいつは、銀の髪に緑の瞳をした若い男だった。 この後宮では、他にないぐらいくつろいだ格好をしている。 白いシャツに黒いズボンというくつろいだ姿のその男は、俺をその深い緑の瞳でじっと見つめた。 俺は、なんだか恥ずかしくって、顔をそむけた。 「泣いてなんか・・」 俺の頬は、いつの間にか涙に濡れていて、俺は、慌てて手の項で涙の跡を拭おうとした。 が、その男が俺の手を掴んだ。 「・・離せっ!」 「もっと、よく見せろ」 はい? 男は、俺の目を覗き込んだ。 「本当に真っ黒な瞳をしているんだな。あの夜は、気がつかなかったが、美しい瞳だ」 「あの夜?」 俺は、そいつのことをじっと見つめた。 「ああっ!」 俺は、声をあげた。 「あの時の童貞野郎か?」 「誰が、童貞だ」 若い男は、頬を微かに染めた。 「もう、初めてじゃないぞ」 「ああ?」 俺は、にやっと笑った。 「1度やったぐらいで、偉そうに」 「あれから、少しばかり閨房の術について学んだ」 男は、俺の顎に手をあて俺に上を向かせると俺の頬の涙の跡を舌で舐めとった。 「んっ・・やっ!」 「試してみるか?セイ」 男は、俺の返事を待たずに俺を抱き上げると寝室へと運んでいった。 「お、下ろせ!」 「じっとしていろ」 男は、俺に命じた。 「落ちるとあぶない」 男は、俺をベッドの端に座らせると、俺にキスしてきた。 「んふっ・・」 始めは、啄むようなキスだったが、だんだん深まっていき、しまいには、俺は、口中を舌で掻き回されていた。 俺は、必死で男の口付けに応えようとしたけど、気持ちよさに意識が飛びそうで涙が出てきた。 「んぅっ・・はぁっ・・」 男は、しばらく俺を貪り続けた。 俺の口許は、涎まみれになり、それが首もとまでも滴り落ちていった。 客の中には、こういうのを好む者もいたが、たいていは、男娼とキスなんてしない。 ぼうっとなっている俺から唇を離すと、男は、俺の耳元で囁いた。 「舌を出して」 「んっ・・」 俺は、無意識に男の言葉に従っていた。 男は、俺の舌を吸い、甘く噛んだ。 「ふぁっ・・んっ・・」 俺が涙と涎でぐちゃぐちゃになる頃、やっと男は、俺を解放した。 男は、耳に舌を這わせると、低い声で言った。 「もう立ってるぞ、セイ」 「!」 俺は、自分の股間が膨らみを持っていることに気づいて、頬が熱くなるのを感じた。 「こんなこと・・」

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