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第13話

2ー1 あいつしかいないんだ。 『聖剣イェイガー』と名乗ったその剣は、不思議な剣だった。 俺以外の誰もそれがあることに気づかない。 みんな、無意識にそれを避けて通っているようだった。 「お前は、何なんだ?」 俺が問うと、そいつは偉そうな態度で答えた。 『我は、遠き古の時代に鍛冶の神 グリウスによって鍛えられし聖剣だ』 マジかよ。 俺は、ここの連中に怪しまれないように小声で呟いた。 「なんで、聖剣が俺なんかのとこに?」 『我にもそれはわからぬ。ただ、お前は、確かに我の主に相応しい人物であると感じる』 どうなってるんだよ? 俺は、1つだけ確かめたいことがあった。 「なんで、ラミエルに反応しなかったんだよ?あいつは、勇者の星を持つ男なんだぞ」 『勇者にもいろいろあるのだ』 イェイガーは、俺に話した。 『お前の弟は、我の主の器ではなかったのだ』 「でも」 もしも、こいつがラミエルを主人と認めていたなら、ラミエルは、もしかしたら。 そう思うと、俺は、堪らなかった。 かわいそうなラミエル。 本当に、ついてない。 『主は、なぜ、そんなにあの者のことを気にしているのだ』 「決まってるだろう。あいつは、俺の弟なんだぞ」 俺は、小声で囁いた。 「気にして当然だろう?」 『しかし、あやつは、主のことをそのようには思っておらんようだったが?』 「うるせぇな!」 俺は、思わず激昂して剣を放り投げた。 「わかってるんだよ!そんなこと!」 俺は叫ぶと、その辺をうろついてから、部屋の隅の床の上に座り込んで壁にもたれた。 そんなこと、とっくにわかってるんだよ! 俺は、神の加護すら得られなかった『無印の者』だ。 親には、捨てられたし、エドだって俺を見捨てた。 こうして連れてこられた王宮でも、ほぼ放置されているし。 誰も俺に興味を持つことはあっても、俺を必要とする者は、いない。 この黒髪黒瞳を珍しがられることがある、ただ、それだけだ。 こんな世界の中でラミエルは、それでも俺を頼りにしてくれていたんだ。 俺を必要とする者は、あいつしかいないんだよ。

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