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第33話
3ー9 誰のことだよ?
なんでもなくはなかった。
俺は、それから熱を出して寝込んでしまった。
ラウスは、俺のために熱冷ましの薬草を煎じてくれた。
「まずい・・」
俺は、一口飲んで顔をしかめた。
ラウスは、俺に薬草を飲ませ続けた。
「仕方がありません。薬とはこういうものなんですから」
俺は、苦くて、不味い薬を飲み下しながら密かに誓っていた。
もっと、飲みやすい薬を作ろう、と。
王は、俺が寝込んだことを知り、自分の主治医を寄越してくれた。
だが、医師は、王の側室である俺の体に触れることは、許されないのだと言う。
医師は、俺の容態だけを見て、診断を下した。
「おそらく疲労からくる熱でしょう。ゆっくりとお休みになり、滋養のあるものをお食べになられたらすぐに良くなられるでしょう」
だが、俺の熱は、3日間ほど続いた。
その間、度々、王は、訪れてくれたらしい。
けれど、俺は、よくは覚えてはいなかった。
ただ。
夢の中で王が俺の体を冷たい水で濡らした布で拭き清め、服を着せてくれたような気がする。
そんなわけが、ないだろうけどな。
「夢ではございませんよ」
熱が下がってから、クレイに聞いたことによれば、熱にうなされている俺を王は、看病してくれていたのだという。
マジか!
俺は、恥ずかしくて掛布に潜り込んだ。
その日の夜にも、王は、俺のもとを訪れた。
俺は、薬のせいか、眠くって。
「んっ・・」
「いいから、眠ってろ」
王は、俺の頬と額を優しく撫でた。
俺は、そのまま眠ってしまった。
翌朝。
俺が目覚めると、隣に王が眠っていた。
マジかよ!
俺は、眠っている王の顔をじっと見つめた。
うん。
やっぱり、幼いな。
まだ、子供といってもいいぐらいだった。
こんな子供に、いいようにされているなんて。
俺は、急に腹が立ってきて、王の鼻を摘まんでやった。
「んっ・・」
王は、まだ目覚めなかった。
疲れてるんだ。
俺は、王の隣に横たえて彼のことを見つめていた。
美しい寝顔だ。
俺は、そっとその唇に指先で触れた。
不意に、唇が震えた。
「・・イロイ・・」
はい?
俺は、王の口から飛び出した男の名に 思わず起き上がっていた。
イロイって、誰だよ!
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