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第46話
4ー9 マナ
俺たちは、砦にある王の執務室へと場所を移した。
王は、人払いをした。
その部屋に俺と王は、2人きりになった。
そこの寝椅子に腰かけた俺の隣に座って、王は、話を始めた。
「これは、40年ほど前の話だ」
魔界の核を取り囲むようにして魔王を崇拝する国々は広がっている。
だが、魔界の核の放つ瘴気は国々を蝕み、何十年かに1度、瘴気を浄化するための力を持つ御子を異世界より召喚しなくてはならない。
40年前に召喚されたのは、ニホンという国から来たという少年だった。
少年の名は、ユウト。
ユウトは、魔王の眷族たちに望まれるままに、浄化の力をふるい国々をめぐって旅をした。
その旅の終わりに、彼は、トリアニティ王国の王子と恋に落ちた。
ユウトは、異界人だったため、オメガでもアルファでもなかった。
もちろんベータでもなかった。
だが、彼は、王子の子を身籠った。
オメガでもないにも関わらず子を身籠ったユウトにみな、不信感を持った。
魔王の眷族たちは、ユウトの子を殺そうと考えた。
だが、ユウトと王子は、子を守るために駆け落ちしたのだいう。
しかし。
逃避行の途中でユウトと王子は、離れ離れになってしまった。
王子と引き裂かれたユウトは、失意のうちに1人、アリスティア王国の国境までたどり着いた。
その国境の小さな町の安宿の片隅でユウトは、1人、子を産んだ。
だが、馴れない異世界で無理をしたため体調を崩したユウトは、そのまま還らぬ人となった。
残された子は、マナと名付けられその安宿の女将に引き取られた。
この子供は、異世界の記憶を持つ渡り人だった。
宿屋で奴隷のように扱われていたマナだったが、渡り人であるマナを気味悪がった女将に旅の芸人に売り飛ばされた。
旅芸人は、マナを連れて旅をしたが、病にかかり、共に旅していた一座の者たちに魔物の森に捨てられた。
幼いマナは、旅芸人と森に残ることを選んだ。
そして。
1人でさ迷っていたマナは、何があったのか、記憶をなくし、アリスティア王国の神官であるエドによって拾われた。
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