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第67話
6ー5 ロリア
俺がアリスティア王国に嫁ぐ計画は中止となった。
今は、長旅などさせるべきではないという医師の忠告をトラウト王が聞き入れた結果だった。
それからというもの、毎日、ラウスとクレイの食事攻勢が始まった。
城の調理場を借りては、俺が好む食べ物を用意したり、妊娠中の体にいいという煎じ薬だのを煎じてみたり。
2人の甲斐甲斐しさは、嬉しかったけど、不味い煎じ薬やらなんやらを無理矢理飲まされたりして俺は、辟易していた。
だけど、それがきいたのか、俺は、どんどん回復していった。
「俺、死なないんだな」
俺は、ラウスたちの用意してくれたスープを啜りながら呟いていた。
王に、また会える。
しかも、王の子供までが俺の体に宿っているというのだ。
俺は、ふと、自分の腹に手を当ててみた。
ここに、王の子がいる。
俺は、ベータだけど、王の子を産めるんだ!
だいぶん元気になって王城の中庭を散歩したりできるようになった俺に弟であるロリア皇太子が付き添ってくれた。
「大丈夫ですか?兄上」
ロリア皇太子は、俺とは、全く似ていない。
大柄で、燃えるような赤毛をした端正な顔立ちの青年だった。
ロリアは、左手の甲に炎属性の証である紋様が刻まれていた。
このトリアニティ王国の中には、俺を快く思っていない人々が多い中で、ロリア皇太子は、俺に優しかった。
忙しい中 何かと暇を見つけては、俺に会いに来ては、城の中を案内してくれたり、庭を一緒に歩いてくれたりと親切なロリア皇太子を、俺は、ついつい頼りにすることが多くなっていた。
そんなある日のことだった。
俺は、ロリア皇太子に誘われて、少し遠出をすることになった。
俺が、母である御子ユウトのことをきいたら、ロリア皇太子が母が召喚されたときに現れたという美しい泉に連れていってくれることになったのだ。
ロリア皇太子は、地竜に乗ることのできない俺を横抱きにして地竜の背に乗せると、駆け出した。
俺は、恐怖心でロリア皇太子にしがみついていた。
「しっかり捕まっていてください、兄上」
ロリア皇太子は、男らしい笑顔で俺を見下ろすと、地竜の腹を蹴って速度をあげた。
俺は怖くて余計にロリアにしがみついていた。
ロリアは、そんな俺を優しく抱き締めて地竜を走らせた。
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